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閑話休題(W)

著作 早坂由紀夫

Chapter55
「狂いしゆめ、君が忘れた事」


「あなたの事、なんて呼べばいいの?」

「あ、私は『なぁ君』って呼んでるよっ」

「ふ〜ん。じゃあ・・・なぁ君でいっか」

「うんっ。君はなんて言うの?」

「ゆめ? ゆめは・・・かづき。かづきゆめ」

「ゆめちゃん?」

「・・・うん。ゆめちゃん」

「僕はなぁ君でゆめちゃんはゆめちゃんだねっ」

「僕? 女の子なのに、変なの」

「うぅ〜・・・女の子じゃないよっ。僕、男の子だよっ」

「だって髪の毛長いもん。ね、ゆりお姉ちゃん」

「髪が長くても男の子なんだよ、なぁ君は」

「ふ〜ん。やっぱり変なの」

「うぅ〜ゆめちゃんが虐める〜」

「駄目だよ、変だなんて言ったら」

「・・・わかった。ごめんね、なぁ君」


 ――――いつかの言葉。いつかの記憶。いつかの気持ち。

 私は・・・思い出すたびに懐かしさというものを感じる。

 それはただ一つ、私が持つ事の許された過去。


「夏の風っていいよね〜。なんか僕、好きだなぁ。
 何かを思い出しそうになったり、胸がきゅってなるんだ」

「ふ〜ん。ね〜、なぁ君」

「な〜に?」

「ゆめはね、なぁ君とずっと一緒にいたいな」

「僕も一緒が良いな。ゆめちゃん楽しいもん」

「うん。ゆめもなぁ君と居るとふわってなるの」

「ふわ・・・って?」

「ふわふわって。浮かんでいけそうなくらいだよっ」

「ん〜よくわかんない」

「ゆめはもうすぐどこかにお出掛けしなくちゃいけないの。
 なぁ君のママに言われたの。一緒にいたら駄目って」

「ママが? 僕とゆめちゃんが
 一緒にいたらいけないって言ったの?」

「うん。ゆめとなぁ君は結ばれないんだって」

「結ばれない・・・紐か何かかな」

「違うよ。ゆめとなぁ君は一緒にいられないって事だよ」

「え〜? やだなぁ」

「やだよね。いつかまた一緒に遊びたいな」

「うん。僕も」

「じゃあ約束しようよ。また会おうねって」

「そうだね。僕、約束する。
 ゆめちゃんとまた会うって・・・約束する」



 それ以来私はずっと探し続けている。

 いつか夢見た二人の場所。

 あなたは覚えていない。

 でも覚えてなくてもいい。

 私は絶対に諦めないの。

 あなただけが生きる意味だから。

 あなただけが私の全てだから。

 約束、私は忘れないよ。

 それ以外のものは全て失くしてしまったけど、

 それだけはぜったいぜったい、忘れないよ・・・。

2ndSeasonへ続く