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インフィニティ・インサイド

著作 早坂由紀夫

Chapter38
「黒い種(V)」

10月05日(日) PM21:21 晴れ
寮内自室

こうなるなんて思ってもみなかった。
・・・いや、どこかで解ってたのかもしれない。
こうなってしまう事を。
外では風が窓を打ち付けている。
まるで戻れない事を示唆するかの様に。
何処へ行くのか解らない風。
そうこの日、俺は学園祭に追われてたんだ。
それで今日は終わるはずだったんだ・・・。

10月05日(日) AM09:32 晴れ
学園校舎・第二体育館

体育館のステージ。
そのフローリングの床に貼られたテープ。
いわゆるバミという奴で、
立ち位置にそれを貼っておくんだそうだ。
俺達三人の名前の書かれたテープが一番多い。
客席からはまず見えないが凄い数だった。
それにしてもこの一ヶ月、本当に練習したよな。
学業が本分とは思えないくらいだ。
体育館入り口からぞろぞろ人が入ってくる。
この文化祭・・・学園祭というのが正しいらしいが、
今日という日は学園が一般開放されるのだ。
そのせいか私服が目立つ。
さっきから入ってくるのは私服の男ばっかし。
かと思うと制服私服の女子が物凄い数なだれ込んできた。
舞台裏から覗いていた他の人もそれに戸惑いを隠せない。
「こ、こんなにお客さんが来るなんて嘘でしょ?」
そんな風に騒いでるのは亜樹。
この劇は一年の出し物なので、
参加できる人間は皆かり出されているのだ。
ちなみに紅音はマジで樹の役をやろうとして止められた。
劇の出演者はしばらくして舞台袖に集められる。
中心にいたのは勿論美玖ちゃんだった。
「さぁて、凪の三文芝居を私達がフォローするわよ」
そんな美玖ちゃんの勢いの隣で、
真白ちゃんがぶるぶると震えている。
やっぱり緊張してるんだろうか・・・。
「わ、わたし、あがり症なんですよぉっ」
「大丈夫だよ。皆いるんだから安心して」
「そうよ、むしろ緊張するべきなのは凪なんですからね」
まだそんな事を言う美玖ちゃん。
でもあまり嫌な気はしないんだよな。
やっぱり周りに誉められてばかりだから、
こういうのって新鮮に思えるのかもしれない。
・・・ってそれはちょっと嫌味だろうか。
「凪さん、手を握っても良いですか?」
「う〜ん・・・その質問は意味無いね」
なぜなら真白ちゃんは俺の手をすでに握っていた。
俺は苦笑いするしかない。
そうしている内に降りていた緞帳の向こうで、
地鳴りの様な拍手がなり始めた。
恐らく司会進行の人が現れたんだろう。
そろそろ10時。劇の開演時間だ。
緞帳の向こう側で司会役の男の声が聞こえてきた。
「では一年の劇で『銀色の花嫁』です」
その声と同時に俺達にも緊張が走る。
いよいよ開幕だな・・・。
美玖ちゃんは至って冷静に周りに指示を出していた。
俺と真白ちゃんはただ出番を待つ。
最初に目の前の舞台に出ていくのは俺と美玖ちゃんだ。
静かに緞帳が上がり、BGMが流れる。
そして照明がバッと照らす中。
美玖ちゃんと俺が走っていく。
歓声に包まれながら俺達は客側を向いた。
俺は思わず息をのんでしまう。
・・・これが、劇の舞台なのか。
スポットライトで思わず目を閉じてしまいそうになる。
目の前の数十ないしは百のお客さん達。
その目に見つめられている気がしていた。
身体が硬い。
美玖ちゃんの方を見つめたままで動けないのだ。
隣の美玖ちゃんは平然とした顔をしている。
だが俺がその雰囲気にのまれた事に気付いた様だった。
すると彼女はいきなり俺の手を取る。
「どうしたのよ凪、今更二人きりだからって
 緊張しなくても良いのに」
美玖ちゃんはアドリブで話し始めた。
俺の緊張を解こうという意図なのだろうか。
言葉を選びながら俺もそれに合わせた。
「そんなわけじゃないさ、君の顔に見とれていたんだよ」
多分この主人公が言うであろう台詞。
その第一声を出してしまうと、
少し身体の硬さが取れた気がした。
本当は最初の台詞は俺が言うはずなんだよな。
美玖ちゃんに助けられたぜ・・・。
「それにしても、君と居られる時間が幸せだよ美玖」
「ああ・・・凪、あなたの愛しさに埋もれてしまいたいわ」
少しアドリブを入れてくる美玖ちゃん。
そんなノリに合わせて俺の方もアドリブを入れていく。
しばらくすると俺は充分に動けている事に気付いた。
多分、美玖ちゃんに動かされてるんだろうな。
この子の巧みなフォローがあるから、
こんなにスムーズに台詞や動きが出てくる。
芝居をしやすい雰囲気が彼女を中心に出来てるんだ。
それに乗る様にして俺は演技を続ける。
劇の間、美玖ちゃんのウェーブのかかった長い髪が
俺の目にはやけに鮮明に写っていた。

10月05日(日) AM10:27 晴れ
学園校舎・第二体育館

「ねぇ、私達って不思議な出会いだったよね」
「え? そうだな、確かに不思議だった」
「でも・・・運命だよね」
「どうかな。けど運命じゃなくても、
 きっと君を探してたと思う」
そこでケミストリーの曲が流れ始める。
同時に緞帳がゆっくりと降りはじめた。
観客席からは拍手がこだましている。
緞帳が降りきると俺は思いっきり伸びをした。
「ふぁ〜、お疲れさまでした〜」
30分に渡った劇はようやく終わりを告げる。
だがそれと同時に俺の元に歩み寄ってくる人が居た。
美玖ちゃんだ。
「今日の演技、まあまあだったわ。
 でもアイドル演技をどうにかしないと未来はないわよ」
俺は別に俳優を目指してるワケじゃないから構わない。
でも初めて美玖ちゃんが俺を誉めてくれた気がする。
舞台袖に一旦戻ると再び緞帳があがった。
最後に舞台挨拶みたいな物をする為だ。
ただ礼をして美玖ちゃんがちょこっと喋るだけだが、
勿論ここで手を抜くわけにもいかない。
周りのキャストがどんどん舞台へと歩いていく。
俺も拍手の鳴り響く中を、舞台へと戻っていった。
そして軽く礼をすると一歩下がって、
美玖ちゃんの言葉を待つ。
「今日はどうもありがとうございました。
 一年生の劇はこれにて終了でございます。
 それでは皆様、本当にありがとうございました」
彼女がそんな挨拶をすると再び緞帳が降りる。
その瞬間、この一ヶ月が報われた様な気がした。
俺も生徒会と併せて良くやったよなぁ・・・。
今日ばかりは自分を褒めちぎりたい気分だ。

10月05日(日) AM10:48 晴れ
1−3教室内

最高の気分はあっという間に消え去っていた。
なぜかって、理由はこれまた簡単だ。
一躍なのかは知らないがアイドル扱い。
握手やサインを求める奴までいた。
それも男が多い。女の子も少なくない。
つまりとんでもない人数だ。
必死に笑顔でそれをかわしながら教室に戻ってきた物の、
完璧に男子と一部の女子にファンを作ってしまったな・・・。
紅音の奴も妙にはしゃいでいる。
今日が学園祭だからだろうか。
机にはどっさりと食い物が並べられていた。
「紅音、それ買ってきたの?」
「だって美味しいって言うんだもん・・・。
 これを食べなかったら三生分は損するって」
なんだそりゃ・・・。
とにかく薦められるままに買いまくったみたいだ。
それを紫齊が横からちょこちょこと食べている。
酒のつまみの要領で喰ってるんだろうか・・・。
「凪、あんた考えてる事が顔に出てるよ」
「えあ・・・そ、そう?」
「ど〜せ私は酒飲みですよ〜だ」
ホントに顔に出てたらしい。
まあとにかくこれで学園祭は一段落ついて、
後はゆっくり午後を過ごすだけだった。
ラストには後夜祭とかいうイベントが待ってるらしいが。

10月05日(日) PM16:03 晴れ
学園校舎・第二体育館

なぜか後夜祭にはダンスがある。
それもシックなダンスイベント。
どうせならトランスとかでぶっ飛んでる方が、
些かマシな様な気もした。
あまり真面目なのだと恥ずかしい。
椅子を片付け用意を済ませると俺は舞台に立ってみた。
今朝、ここで演技をしたとは思えない。
ずっと前の出来事みたいだった。
しばらくすると人が集まってきて、
開放的な感じのまま後夜祭が始まる。
俺はテーブルに載せてある食事に手を伸ばしながら、
紅音達と共に後夜祭を楽しんでいた。
そして司会進行を任せた生徒会書記が舞台に上がる。
「それではまず、今日のMVP〜〜〜っ!」
異常なくらいのテンションで司会の男が叫んだ。
ここはホントに宗教関係の学校なのだろうか・・・。
一瞬そんな事がよぎったが、男はもっと衝撃的な事を言う。
「今日のMVPはぁ・・・高天原凪すわぁ〜〜〜〜んっ」
「え、お・・・俺っ!?」
思わず男言葉で叫んでしまった。
しまった、演劇で口調が元に戻りつつあったみたいだ。
俺はさ〜っと引いていく血の気と共に、
辺りを恐る恐る見てみる。
皆、軽く笑っていた。
・・・演技の延長だと思ったのだろうか。
「凪ちゃんってば、男言葉に慣れちゃったんだね〜」
そんな事を笑いながら紅音が言う。
バレてない・・・。
俺はふと思った。
もしかすると俺が自分で男だって言っても、
誰も信じてくれないんじゃないだろうか。
有り得そうで凄く嫌な想像だ。
とりあえず舞台に上がってメダルみたいな物を貰った。
そのメダルはいかにもという丸い形をしている。
まるでメダルがそうあるべきだという形の様だった。

10月05日(日) PM20:24 晴れ
寮内自室

一日が終わる。
食事を終えて風呂にも入った。
結局ダンスは最悪の記憶になっていた。
来る奴来る奴が皆まとめて男だからな。
かといって女の子と踊るのも変だ。
俺は誰とも踊らずに帰ってしまったわけだ。
そしていつも通り紅音と話している。
それは時間の概念が消えてしまいそうな一時。
紅音と出会った時からずっとこうやってる気さえする。
そんな風にぼ〜っとしていると、ふいに紅音が立ち上がった。
「凪ちゃん今日踊ってなかったよね。今ここで私と踊ろ〜よ」
「え・・・そう、だね」
めいっぱいの笑顔で紅音はそう言う。
一ヶ月前ここで聞いた紅音の悩み。
あれ以来、紅音はずっと笑顔だった。
だからあの時の事も忘れてしまおう。
多分、大した悩みじゃなくなったんだろう。
俺は立ち上がると紅音の手を取って踊り始めた。
大した踊りじゃなくて、ただ揺れているだけ。
それだけで充分な気がした。
「やっぱり雰囲気が大事だよ」
そう言って紅音はおもむろに電気を暗くする。
外では風が出てきたのか少し窓が震えていた。
BGMはそんな軋む窓と風の音。
しばらくの間、そうやって踊り続ける。
「これから冬になるねぇ・・・」
「そうだね、コタツとか出そうか?
 紅音そう言うの好きでしょ」
「うん、コタツでぬくぬくしよ〜ね」
紅音の笑顔は光加減のせいか妙に大人っぽく見えた。
思わず俺が視線をそらすと紅音は不満そうな顔をする。
「ちゃんと私の方を見なきゃ踊りじゃないよ〜」
「そんな事はないと思うけど・・・
 ちょっと余所見しただけだってば」
紅音はくりっとした目で俺を見つめていた。
お互いの顔が凄く近い。
そういう踊りだからだけど、
いつしか俺は紅音の瞳から目をそらせなくなってた。
すると紅音はくすっと笑う。
なんとも言えない間が出来た。
紅音は何かを言いたそうに上目遣いに俺を見てる。
「ねぇ凪ちゃん、私・・・知ってたよ」
「・・・え?」
しばらくして紅音がそんな事を言い出す。
どこか戸惑った様な表情。
それはなんだかくすぐったい感じがした。
「凪ちゃんって・・・本当は男の人なんだよね」
紅音の口から飛び出した言葉。
それはずっと隠してた事。
紅音に言えなかった事・・・そのはずだった。
「・・・知ってたんだ」
「当たり前だよ。私、一番近くに居るんだから」
なぜか驚きは思った程大きくなかった。
そうなのか、と思うだけ。
少しだけ心臓の鼓動は動きを早めていた。
雰囲気はどこか二人の温度を近づけていく。
紅音のきめ細かい肌が目の前にある。
そのふにふにした頬が近くに見えていた。
そしてどちらからともなく軽く口づける。
こうするのが凄く自然な事に思えた。
「・・・なんかいけないコトしてる感じだね」
「そう、かも」
少し照れながら笑うと、そっと紅音は俺の髪に触れた。
そのまま紅音は俺に聞いてくる。

 「私って変かな?」
 「うん」
 「ん〜、じゃあ世話も大変だなって?」
 「うん」
 「でも・・・好き?」

 「・・・うん」

もう一度軽く口づけると、紅音は俺に抱きついてくる。
いつもとは違ってどこか変な感じの抱擁。
次は舌を軽く入れてキスした。
おずおずとだけど紅音はそれに答えてくれる。
そんな紅音の姿を見ている内、
俺は抱きしめているだけでは足りなくなっていた。
「・・・紅音の事、全部知りたい」
「えぇ!? だっ、だだだ駄目だよぉっ」
紅音は急に慌ててそんな風に言う。
なんとなく俺もそう答えると思っていた。
こういう事に関してお子様な奴。
そんな事今までの態度で解ってた。
だけど、どうしても諦めきれない。
頭の中に紅音を抱く自分の姿が浮かんでいたからだ。
俺は強く口づけながら紅音を半ば無理矢理に押し倒す。
「んくっ・・・凪ちゃんのえっち・・・」
諦めた様に顔を赤く染める紅音。
下手したら紅音の事を壊してしまいそうだった。
その全てを俺が独り占めしたい。
誰にも見せない顔を俺だけに見せていてほしい。
早く一つになりたいという衝動が俺を急かす。
そして俺はパジャマのボタンを一つ一つ外した。
紅音は恥ずかしいらしくて、
下唇を噛みながらそっぽを向いてる。
ボタンを外すと可愛らしい青のブラが見えていた。
それは凄く紅音に似合っている。
艶やかというよりはまだ少し可愛らしいくびれのライン。
「えとね、変じゃない?」
「全然変なんかじゃない。可愛いよ」
さらに俺はキスしながらブラを外した。
戸惑ってる紅音の顔を見ながら軽く胸に触れてみる。
「く、くすぐったいぃ・・・」
サラサラした感じ。
それと途方もない柔らかさ。
ずっと触れていたくなるような温かさ。
小ぶりではあるけれどそれも紅音らしい気がした。
紅音は照れた顔をして俺の手に触れる。
「小さい、かなぁ」
「言うと思った。紅音らしくて俺は好きだよ」
そう言うと照れながらも紅音はにっこりと微笑んだ。
俺は胸に伸ばした手をそっと下に降ろしていく。
そのまま白さが浮き立つ様な太腿に触れる。
紅音の全てを自分の物にしようとしてる感覚。
さらに俺は下着の中に手を伸ばした。
「わぁっ・・・駄目だよぉ」
両手で差し入れた俺の手を押さえようとする。
でも構わずにその未成熟な秘部へと手を伸ばした。
「へ、変な感じがするよぉ〜?」
「俺ビギナーだから、痛かったら言って」
「痛くないけど・・・ふぁ・・・なんか、きゅってなるの」
よくわからないけど気持ちいいのだろうか。
中指を恐る恐る中へと入れてみた。
だが途中で何かにつっかえる。
感触を確かめながらで良かった・・・。
多分、これが処女膜なんだろう。
それを傷つけない様に指でさする。
すると少しずつ手に濡れた感触が伝わってきた。
ねっとりした音も聞こえてくる。
「わ、わたし・・・変なのかな。凄く気持ちいい」
「それが普通なんじゃないかな・・・」
「そっか・・・んっ、あのね・・・
 もっと、そのぉ・・・して、ほしいな」
頬を赤く染めながら紅音はそんな事を言う。
俺はそんな顔を見ている内に我慢できなくなって、
紅音のパジャマを下に降ろして下着を露わにした。
さらに自分のモノを取り出す。
すると紅音がそれを見て驚いた様な表情を見せた。
「そ、それが男の人のなんだ・・・
 なんか凪ちゃんに似合わない」
冷静に感想を付けられると引っ込めたくなってしまう。
だがそれとは別にそれは怒張していた。
恥ずかしさを堪えながら俺は紅音に言う。
「挿入れるよ、紅音」
「え、う・・・うん。ちょっと怖い・・・」
そんな言葉は気にせず紅音の下着を適当に脱がせると、
そんな欲望の象徴を紅音に埋めていく。
躊躇するのも嫌なので一気に貫いた。
めりっという感触と共に紅音の純潔の証は破られる。
血が出ているのかは解らないけど、
あまり気持ちのいい感触じゃなかった。
だがその後すぐに俺は締め付けられる快感を味わう。
すぐにでも紅音を滅茶苦茶にしたい。
そんな暴力的な感情が生まれていた。
だが・・・。
「あっ・・・っ、はあっ・・・! ふぅ、ふぅ、ひっひっふぅ〜」
その妙な苦悶の声で俺の劣情が一部削り取られていく。
なぜにラマーズ法・・・?
だが冗談めかしてる様でも痛みで紅音の表情は歪んでいる。
涙を浮かべながら紅音は必死に耐えていた。
「大丈夫・・・じゃないか」
「だ、駄目だよぉ〜・・・ちくちくしてひりひりする」
俺はそんな紅音を抱きしめる。
紅音も力の限りに俺に抱きついていた。
相当痛いんだろうなぁ・・・。
少しすると紅音の表情は和らいでいく。
念のため、ゆっくりと確かめる様に動く事にした。
「痛くない?」
「うっ、ん・・・じんじん痺れてるけど、平気かも・・・はうぅ」
痛い所を避けようとしてるのか紅音は腰を動かしてる。
それが俺には物凄い刺激になっていた。
ただでさえ締め付けが凄いのに・・・やばい。
紅音の方もいつしか苦痛の表情はすっかり消えてる。
それどころか少し気持ちよさそうな顔さえしていた。
「あっ、凪ちゃん・・・もっと動いて、良いよ」
「・・・わかった」
「ん・・・こ、これが一つになってる感じ、なのかなぁ」
そう言われてみればそんな感じがした。
紅音と一つになってそのまま溶けてしまう。
そんな感じ。
頭のどこかがイカれたみたいに快感で機能してない。
どこまでも昇っていけそうな感じ。
これは、夢じゃないんだよ・・・な。
「ひゃんっ・・・! 今、ふかいトコに来たぁ・・・」
嘘みたいだけど俺は紅音と繋がってて、
紅音は俺の腕を掴みながら目を細めて感じてる。
お互いを補い合ってる様な感覚。
二人で一人みたいな・・・一体感。
いつまでも味わってたい。
溶けてしまいそうなこの快感を。
紅音の事を。
でもそれが強い快感であるが故に、
俺の限界はもうそこまで来ていた。
引き抜こうとして離れようとする。
けど紅音は俺に抱きついて離れなかった。
おまけに足でがっちり固定されてる。
「ちょ、紅音・・・抜くから離してくれっ」
「このままで良いよっ、凪ちゃ・・・ふぁっ・・・。
 凪ちゃんっ、私を抱きしめててっ・・・!
 強く、絶対に離れない様に・・・きつく抱きしめてぇ!」
「く・・・おん」
刹那的な行為だからだろうか。
紅音が言う通り、最後まで抱きしめていたいと思うのは。
どうしてか解らないけど涙が出そうになってしまう。
「解った・・・離したりしないよ、絶対に」
波は容赦なくやってきて、流れ去ってく。
強くきつく俺は紅音の身体を抱きしめていた。
そして抱きしめたままで俺は紅音の膣内に全てをぶちまける。
「あっ・・・ふわぁあああぁぁあっ・・・!」
びくっとしたかと思うとぐったりとして動かなくなる紅音。
そんな恍惚の表情を見つめながら、
俺は残さず全てを吐き出していく。
どこか紅音は余韻に浸ってる様にも見えた。
そのまま倒れ込みそうになって、なんとか俺は横に寝転がる。
ふと、ふわふわしてる紅音の髪を撫でてみた。
紅音は横向きになって俺の方を見ると言う。
「凪ちゃんは・・・気持ち、良かった?」
「・・・ああ。おかしくなりそうなくらい」
「そっかぁ〜」
息を切らせながらはにかむ様に笑うその表情は凄く可愛くて、
俺はその頬にキスするとしばらく紅音を抱いていた。
離れまいとする様に手を繋ぎあいながら。

10月05日(日) PM21:16 晴れ
寮内自室

軽い後悔。
そんなものが全て終わった後で俺を襲う。
隣で紅音はじっと俺の事を見ていた。
何を考えてるのか窺ってるみたいに。
その顔を見てる内にどんどん後悔が襲ってきた。
俺はこいつを汚してしまった様な気がしてる。
それに中出し。
無いとは思うけど、もし妊娠なんかしてしまったら・・・。
・・・俺、どうしよう。
お互い裸のままで毛布一枚纏った状態。
それで今更そんな事を考えるのは馬鹿げてる。
なのに俺はそれを聞かずには居られなかった。
「紅音、後悔・・・してないか?」
馬鹿な問いかけ。
こんな事を聞くべきじゃない。
解ってるのにな。
でも聞かずにはいられなかった。
紅音は当然の様に笑いながら言う。
「してないよ。凪ちゃんとした事は、ひとつも」
・・・後悔なんてする必要はなかった。
何があっても紅音は紅音だし、
俺はそんな紅音の事・・・どう思ってるんだろう?
やっぱり好きなんだよ、な。
紅音とだったら子供が出来たっていい気がする。
いや・・・さすがに良くはないか。
「凪ちゃん、ぎゅってして・・・ぎゅって」
そう言われて俺は紅音の事を抱きしめる。
「こう?」
「うん・・・安心するんだぁ。
 温かくて凪ちゃんの匂いがするから」
どうして紅音ってこんな事が言えるんだろう。
男を、俺を喜ばせるような事ばかり。
その度に強く抱きしめたくなる。
この髪の匂いも、柔らかい唇も全てずっと独り占めにしたい。
それはどこかSEXに直結する感情でもあった。
けれど紅音に対する愛しさに変わりはないと思う。

  「紅音」 「凪ちゃん」

思わず同時に呼び合うというボケをかましてしまった。
俺達は少し照れながらお互いを見合う。
「え〜と・・・先に言ってもいい?」
「たぶん、一緒に言ったらハモれるよ」
そんな紅音の言葉に二人して軽く笑う。
「そっか。じゃあ一緒に」

  「・・・大好きだよ」

Chapter39へ続く