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インフィニティ・インサイド

著作 早坂由紀夫

Chapter45
「天使と悪魔」


10月12日(日) AM09:42 晴れ
インフィニティ第一階層・コーサディア・喫茶店2階

ベッドに凪は寝かされていた。
カシスの具現した水の鎖で身体の自由を奪ったままの状態。
そこはイヴとクリアがいる喫茶店の奥だった。
クランベリーが手で凪のペニスを勃起させている。
彼女は慣れた手つきでそれを刺激していた。
「おっ、勃ったの。なんてゲス野郎」
「ねぇ見てよカシス。ルシードの顔、色っぽいと思わない?」
「まあ・・・なきにしもあらずなの」
「この子が自分から快楽を求める様になるのが楽しみだわ」
「・・・のーこめんと、なの」
そんな事を良いながらも、
カシスはそのペニスに釘付けになっていた。
汚いモノを見るかの様な視線も含まれている。
だが興味しんしんと言った方が適切な瞳だった。
「カシスって経験豊富そうに見えないけど、
 悪魔のクセして本当に経験ないのね〜」
「五月蠅いの。アバズレに言われたくないの」
恥ずかしいのかカシスはクランベリーにそんな事を言う。
するとクランベリーはカシスをちらっと見た。
「何よ、悪魔のクセして処女よりマシよ」
女性の悪魔は処女を何度も失う。
精神体では一度だが現象世界で肉体を得ると、
その肉体が処女の場合にそれを失う事になるからだ。
インフィニティで性交する場合、殆どが精神体だ。
例外としてリヴィーアサンの様に、
肉体を持ったままでインフィニティにいる場合もある。
だがカシスは生まれてからずっと精神体のままだ。
そして精神体での性交は経験がない。
「・・・じゃあクランベリーが先にやるの」
「良いわよ。あんたはどうするのよ」
そう聞かれると困った様な表情をしてカシスは俯く。
彼女はまだ心の準備が出来ていなかった。
「ぁ・・・後でいいの」
「あ、そ。じゃあ私が頂くわよ」
仕方ない、という顔をするとクランベリーはベッドに乗る。
絹のローブを脱いで下着姿になった。
さらに下着を足下に置くと凪にまたがる。
その下着は軽く濡れていて、彼女の秘部も糸を垂らしていた。
それに少し驚きながらもカシスはクランベリーを見つめる。
クランベリーは位置を確かめながら腰を下ろしていった。
「んっ・・・ふぅっ・・・」
「・・・クランベリー、痛くないの?」
「濡れてれば痛くないわよ」
そう言いながらクランベリーは上下に動き始める。
腰は慣れた感じの動きで回る様に快感を得ていた。
そんな時に凪の目がぴくり、と動く。
「あ、れ・・・俺、一体・・・」
凪はそこで身体が動かない事に気付いた。
さらに目を開けると下着姿のクランベリーがいる。
驚きのあまりじたばたしようとしたがやはり動けなかった。
おまけに下を見ると何も付けていない
クランベリーの女陰が目に入る。
しかも自分の男根と繋がっている事に気付いた。
「目を覚ましたみたいね、んふっ・・・どう?」
「どうって・・・何してるんだよっ」
声が思わずうわずってしまう凪。
それを見るとクランベリーは怪しく微笑んだ。
「くっ、んはぁっ・・・あなたが、リヴィ様とした事よっ」
「・・・止めてくれ」
言葉少なに凪は行為を止めてくれる様に言う。
だが勿論それでクランベリーは止めたりしなかった。
凪は必死で快感の愉悦に耐えようとする。
「さぁ、早く射精しちゃいなさい。
 次はカシスが待ってるんだからね」
激しく腰を降り始めるクランベリー。
先までの知的な容貌とはあまりにも違うその姿。
快楽を貪る様な妖艶な彼女の表情と喘ぎ声。
それには凪も色っぽさを感じずにはいられなかった。
そんな彼女の魅力に押される様に、
凪はあっという間に射精してしまう。
「うぁ・・・」
「あはぁああっ・・・!」
怪しい腰つきで凪が果てた後も動き続けるクランベリー。
それをただ呆然とカシスは見つめるだけだった。
「あなたのが、お腹の中でびくびくしてるわよ・・・」
クランベリーはそう言って満足げに微笑む。
かと思うとゆっくりとベッドから降りた。
次はカシスがおずおずとベッドに近づく。
しかしどうしようか悩んでいる様だった。
「どうすればいいの?」
「そうね・・・とりあえずパンツを脱ぎなさい」
「解った」
そんなクランベリーの言葉に従い、
カシスは下着を脱ぐとベッドに置く。
すると次にクランベリーはカシスをベッドに座らせた。
さらにカシスの足をベッドにあげて、M字に開かせる。
「軽く私が濡らしてあげるから、
 後はルシードに乗っかりなさい」
「うん、早くやるの」
クランベリーはカシスの股間に顔を埋めると、
ぺろぺろとそこを舐め始めた。
少し照れていたカシスもすぐにその快感を受け入れる。
「はんっ・・・良いっ、感じ・・・なの」
「ふ〜ん、その様子だとやっぱり一人ではやってるのね」
「そ、それは秘密なのっ。この色魔っ」
そんな毒舌にもどこか力がない。
クランベリーはカシスの秘部を唾液を交え濡らしていく。
すぐにそこはペニスを受け入れる体勢が整っていった。
そしてある程度で愛撫を止めるとクランベリーは言う。
「さてと、後はルシードで楽しみなさい」
「うん・・・フレッシュな魅力で、頑張るの」
「あの、ちょっと・・・俺は嫌だって・・・」
「大丈夫。私も嫌なの。
 でもあんたを快楽の地獄にたたき落とす為なの」
そんな風に言いながらも、カシスの表情に余裕はなかった。
凪の男根をじっくりと見つめながら、ちろちろと舐め始める。
じれったいその愛撫で凪のモノはすぐ勃起していた。
「いやらしい男なの。言ってる事とやってる事が違うの」
「そ、そんな事っ・・・」
そんな事がある凪としてはそれ以上何も言えなかった。
おずおずとカシスは凪のペニスへと身体を下ろしていく。
すると意外とあっさりその全てはカシスの中に収まった。
「・・・っく、思ったより痛くないの」
そう言いながらカシスは見よう見まねで身体を上下する。
淫猥な音を立てながら接合部はべっとりと輝いていた。
「はくっ・・・気持ちいい・・・ひゃんっ!」
その内に凪を縛る水の力が緩くなっていく。
凪はそれに気付き、じたばたと動き始めた。
「あっあっあっ・・・そんなに動いたら駄目なのっ!」
「違うって、俺は逃げようと・・・」
そう言いかけるが凪の方もその動きで感じている。
逃げようとする動きが皮肉にも自分の限界を早めていた。
せりあがってくる快感。
カシスは倒れる様に凪に抱きつく。
その時、凪を縛る水の鎖が解けた。
(今しかないっ・・・)
そう感じた凪はすぐさま身体を起こそうとする。
しかしその前にお互いが限界に達してしまっていた。
「はぁあぁああっ・・・!」
「くっ・・・」
収縮する膣内へと精液が注ぎ込まれていった。
凪はそのいきおいに任せて体を起こすと、
そのままカシスをベッドに押し倒す。
それに気付いたクランベリーが凪を睨みつけた。
「・・・馬鹿、カシス! あんたなにやってるのよ!」
「ふぇ・・・身体がぽやぽやしてるの」
「あほかっ! あんたが快楽に堕ちてどうすんの!」
そんな風に言われるがぼ〜っとしたままのカシス。
彼女は目を閉じて失神する様に倒れてしまった。
カシスが当てにならないと踏んだクランベリーは、
足でリズムを取りながら凪と対峙する。
凪は自分が服を着ているのを確認して立ち上がった。
「今度は俺、負けないと思うよ」
「その自信はどこから来るのかしら?
 さっきはあんなにあっさり負けたのに」
「・・・確か君の力は冷気だったよね」
「まあ、それを具現しやすいのは間違いないわ」
それだけを聞くと凪は片手で巨大な火の塊を作り出す。
その一瞬での具現にクランベリーも戸惑いを隠せなかった。
イメージ特性と具現特性というものが存在する。
つまり個々によってイメージしやすく、
それとは別に具現しやすい物があるのだ。
だが凪には具現特性が無い。
それはイメージ次第で何でも出来ると言う事だった。
「そっ・・・そんなの反則でしょ!」
クランベリーが動揺する表情に微笑みかける凪。
凪の笑みには力強い意志が宿っていた。
少し後ずさりながらクランベリーは強力な冷気をイメージする。
だが凪はあっさりと手でその冷気を払った。
その一薙ぎで辺りを炎が包み込む。
「やべ・・・失敗した」
「なっ、なんなのよぉ!」
クランベリーはローブに付いた炎をなんとか冷気で払った。
しかし周りには払いきれない程の炎が放たれている。
冷気で炎を中和するのは難しかった。
水なら手っ取り早いのだが、カシスは失神している。
考えてみれば当然の結果ではあった。
二度も絶頂を迎えていた凪の頭は、
半分ぼけ〜っとしていたのだ。
想像力も中途半端だ。
「あんた、これどうするつもりなの!?」
「や・・・その、ごめん」
「とりあえずカシスをおぶって!」
「はい?」
敵であるカシスをおぶる事に疑問を持つ凪。
だが今はそんな場合でも無さそうだった。
ベッドが燃え始めてカシスの服に燃え移ろうとしている。
おまけにカシスは気を失っていた。
仕方なく凪はカシスを抱え込むと、
目の前に見えたドアへと駆け込んだ。
その後ろからクランベリーも走っていく。

10月12日(日) AM10:07 晴れ
インフィニティ第一階層・コーサディア・喫茶店

俺達が階段を使って一階に下りていくと、
そこには異様な光景があった。
羽の生えた男とイヴが闘っている。
おまけにイヴとクリアが共闘しているのだ。
「イヴッ!」
「凪・・・無事だったか」
イヴは一歩引いたかと思うと相手の男を引き倒し、
トドメに当て身を入れる。
その男は白目をむいて倒れたみたいだった。
とりあえず俺はテーブルにカシスを置く。
「一体何があったのよ、クリア」
怪訝そうに二人を見やるクランベリー。
するとクリアは怒って椅子を叩いた。
「奴らよ! クソ天使達がやってきたのよ!」
「なんですって・・・どういう事よ」
そんな二人の会話を聞いてイヴはため息をつく。
「どうしてか解らないが、
 私を見てもためらいもせずに襲いかかってきた」
そう言ってテーブルを叩くイヴ。
俺とクランベリーは全く状況が掴めていない。
イヴは額に手を当てて片方の手で空を切った。
「奴らは・・・私ごと悪魔を潰しに来たという事だ!」
言い切ると拳を思い切り握りしめる。
「イヴの事を、裏切ったって事・・・?」
「違うわよ」
クランベリーは俺に向かって冷ややかに言い放つ。
それはどこか哀れみの表情が含まれていた。
「ルージュはね、最初からずっと利用されていただけ。
 あいつらは・・・天使はそういう連中なのよ」
にわかには信じがたい。
だけど俺はアルカデイアで見たはずだ。
天使のイヴに対する扱いを・・・。
少しずつ俺は解らなくなっていた。
インフィニティに来てから何が正しいのか、
全てが相反して不鮮明になっている。
悪魔っていうのは邪悪な存在のはずだ。
それなのに・・・この三人に会ってそれが変わりつつある。
人間味のある奴らだって事を知ってしまったせいだ。
・・・ベリアルみたいのばかりだったら、良かったのに。
ふいに窓の外から妙な音が聞こえて覗いてみた。
そこには多くの天使と悪魔の姿がある。
遠目に見てもそれは正しく殺し合いだった。
「イヴ、あれ・・・」
「ああ・・・奴らもそこまで来ている」
もしこのまま俺達が天使に見つかったら、
イヴは殺されてしまうのか?
その時にクランベリーが言った。
「ルージュ。リヴィ様と協力して天使を滅ぼしましょう。
 もうあなたにとって奴らに手を貸す理由はないはずよ」
「・・・出来ない。私には・・・あの人が居る。それが理由だ」
「あの人・・・?」
少し奇妙な感じがした。
それって、その人って・・・まさか。
クリアはそんなイヴを後ろから叩きつけた。
「そんなワケわかんない事言ってる場合じゃないわよっ!
 天使に捕まったらどうなるか・・・知ってるでしょ?」
「なに?」
そんなクリアの言葉に怪訝な一言を漏らすイヴ。
解ってないわね、という表情でクリアはイヴを見ていた。
だがそんな会話を止めさせると、
決意した様に口を開くクランベリー。
「とにかく逃げるのよ。リヴィ様の所に行くわ」
俺もその意見には賛成だった。
とにもかくにもそれは目的の一部ではある。
今は天使から逃げないとイヴが危ないんだ。
そして俺がイヴの手を取って逃げようとした時。
その瞬間、俺は背筋がぞくっとするのを覚えた。
イヴも俺の方を見てぎょっとした顔をする。
「・・・奴も来ている様だな」
「うん。誰かは解らないけど・・・今はっきりと感じた」
「ミカエルだ。この感じは奴の物に間違いない」
その感覚は徐々に近づいていた。
つまり、ミカエルはここに来ようとしている。
「クリア。ルシード達を案内してあげて」
「ど・・・どうしたのよクランベリー」
「全員揃って出ていけば間違いなくやられる。
 私がおとりになるわ」
急にそんな事を言い出すクランベリーに、
クリアとイヴは抗議の声を挙げた。
「無茶だ! あの数を相手にして・・・」
「そうだよ、クランベリーだけじゃ死んじゃうよ!」
だがそれを手で制するとクランベリーは店のドアを開けた。
そのまま彼女は全速力で天使達に向かっていく。

10月12日(日) AM10:12 晴れ
インフィニティ第一階層・コーサディア・喫茶店

流暢に考えている時間はなかった。
さっき俺が放った火が二階から一階へと移っている。
階段の方から少しずつ火が近づいていた。
・・・自業自得と言えばそうなんだけど。
とにかくカシスを起こそうとするクリアだが、
俺のせいなのか起きる気配が全然ない。
「・・・仕方ない。ルージュ、裏手のドアから逃げて。
 それでさ・・・カシスの事よろしくね」
「なにを、言ってるんだ?」
「カシスが道案内はしてくれるから。
 クリアは・・・クランベリーと一緒に逃げるよ。
 だから・・・後で合流しようね」
それだけ言うとクリアはすぐにドアに向かって走っていく。
あまりの出来事に俺とイヴは唖然としてしまっていた。
「と、とにかく裏手から逃げよう!」
「そう・・・だな」
イヴはやるせない表情でクリア達の向かった方向を見やる。
そして俺とイヴはカシスを抱きかかえると、
裏手の扉から外へと走っていった。

10月12日(日) AM10:15 晴れ
インフィニティ第一階層・コーサディア・灼熱の丘

天使の精鋭達を一人、二人と倒していくクランベリー。
すぐに合流したクリアとさらに闘いを続ける。
「邪魔なのよ! ほら、落ちちゃえ!」
クリアの具現した突風にあおられ、
数人が地下を走る灼熱へと落ちていった。
それに負けじとクランベリーも冷気で相手を凍らせる。
「どんな奴も凍っちゃえば脆いのよ」
そうやってクランベリーは凍結した相手を砕く。
そこに一人の天使が現れた。
ミカエルだ。
すると周りの天使はミカエルに助けを求める。
「ミッ、ミカエル様、奴らなかなか手強く・・・」
「うるせえよ。てめぇら精鋭じゃねぇのか?
 俺は闘いに来たんじゃね〜んだぞ」
そんな言葉に腑に落ちない物を感じる二人。
だがすぐさまミカエルとの戦闘態勢に入る。
二人を小馬鹿にした表情で見るミカエルを、
いっそう強くクリアは睨みつけた。
クリアは天使が昔から大嫌いだった。
大した理由はない。リヴィーアサンが嫌っていたからだ。
もともと親という概念のない悪魔において、
彼女は幸運にもリヴィーアサンに拾われる事になる。
それ以来、先に拾われていたクランベリー、
ルージュの二人と共に家族の様に暮らしていた。
後でカシスが加わり家族は五人になった。
クリアは闘う事があまり好きではない。
それもリヴィーアサンの為なら構わなかった。
クランベリーも同様だ。
どちらかといえば好戦的ではある。
しかし穏やかな5人での生活が大好きだった。
それを奪ったのは直接的にはルシファーだ。
だが根元は天使。
リヴィーアサンが憎む天使の存在。
それさえ絶やしてしまえばまた以前の様な暮らしに戻れる。
二人は強くそれを願っていた。
その為には、目の前のミカエル。
彼を倒す必要があった。
ミカエルは天使の総大将的な男だ。
そのミカエルを倒せば目的である、
天使の撲滅が容易になるのだ。
二人は強力なイメージと共に冷気の風を作り出す。
そしてミカエルめがけて放った。
「俺も暇じゃねぇ。そよ風吹かす様な悪魔じゃ・・・」
言葉の途中でミカエルは姿を消す。
かと思えばクランベリーの横に移動していた。
「闘う価値すらねぇぞ」
容赦なしにクランベリーの頭を掴み、
そのまま地面へ横殴りに叩きつける。
手加減された物の頭の手は放れていなかった。
さらに上空へと投げ飛ばされるクランベリー。
「な、なにするんだよぉ!」
突風をイメージしようとするクリア。
だがその前に腹に強力な蹴りを入れられる。
「ぐぁ・・・!」
「クリアッ!」
腹を押さえ倒れ込むクリアを見て、
どうにかクランベリーは空中で体勢をとる。
しかしすでにクリアの隣にミカエルはいなかった。
「おいおい、どこ見てるんだよ・・・」
いつの間にかクランベリーよりも上に飛んでいるミカエル。
そのまま空中で彼女の背中に肘打ちを喰らわせる。
あまりにも人間的な攻撃だった。
「・・・具現なんてチンタラやってるから負けんだよ。
 殴った方が早いだろ?」
クリアとクランベリーはなんとか
地面に倒れながらも意識を繋いでいた。
だが勝ち目が無いに等しい。
ミカエルにしてみればそれは様子見だった。
それだけで二人は致命的なダメージを受けている。
「ク、クランベリー・・・どうしよっか」
「・・・カシスの奴ほんっとに運がいいわ。
 聞いてよ、あいつってばルシードとヤッてて失神したのよ」
「し・・・信じらんない。叩き起こせば良かった・・・」
二人はなんとか立ち上がる。
それを見たミカエルは面倒くさそうな顔をした。
「ったく雑魚に限ってタフだ。
 これだから嫌なんだよ、闘いは」
ミカエルは片手で煙草を取り出してくわえる。
さらに人差し指でその煙草に火を付けた。
少しそうやって煙草をくゆらせると、
片手で巨大な炎を具現する。
かと思うとその炎が剣に形取られていった。
「雑魚共・・・さっさと死ね」
そのままミカエルはその剣を振り下ろす。
すると数m程の火柱が立ち、二人へと向かっていった。
「・・・無茶苦茶な奴ね。やるわよ、クリア!」
「解ってるわよ、吹っ飛ばしてやるんだから!」
二人はギリギリまでイメージを膨らませ、
出来うる最高の冷気の風を作り出す。
そのままそれを火柱にぶつけた。
限界に来たのかへたり込んでしまうクリア。
片膝を付いて成り行きを見守るクランベリー。
なんと二人の作り出した風は、
ミカエルの火柱を少しずつ押し返していく。
それにクランベリーは僅かな望みを託した。
だが、それは甘い考えだった。
「うざってぇ・・・駄目押しだ」
やれやれと言った表情で剣を一閃するミカエル。
次の瞬間に火柱はさらに強力に風を押し返す。
「そ、そんな・・・」
クランベリーは咄嗟に冷気の膜を作った。
それとほぼ同時に大きな火柱が二人を突き抜けていく。
「きゃうっ!」
「あぐっ・・・!」
火傷はない物の物理的な衝撃で吹き飛ばされていった。
それでクリアとクランベリーは身動きもとれなくなる。
正に圧倒的な力で叩き伏せた、というものだった。
それを見るとミカエルはため息をつく。
「オラ、さっさと偽典探すぞ」
「はっ!」
ミカエルは天使達を引き連れて先へ進もうとした。
するとそこで一人の天使が声を挙げる。
「ミカエル様、私達であの二人の始末を
 付けてもよろしいでしょうか?」
「あ? 勝手にしろ。
 さっさと付いてくればそれで構わねぇ。
 ただ・・・くだらねぇ事はするなよ」
「はっ。ありがとうございます」

10月12日(日) AM10:29 晴れ
インフィニティ第一階層・コーサディア・灼熱の丘

  ザグッ!

鋭く痛む手の感触で目を覚ますクランベリー。
目の前にはにやにやと笑ってる天使が数人いた。
思わず攻撃しようとするが身体が動かない。
それに頭がぼ〜っとしていた。
先の闘いで力を使い果たしていたのだ。
手を前に出そうとして物凄い痛みの原因に気付く。
両手が刃物で貫かれていた。
「なっ・・・なによ、これ・・・!」
「お前らが殺ってくれた仲間の分だよ」
そう言うなり爆笑する天使達。
クランベリーは恐ろしい予感を抱えながらも、
次に与えられた痛みに声を失う。
くの字に曲げてある両足の先に、
鋭い錐の様な刃物が突き立てられた。
隣を見るとクリアも同じような状況に曝されている。
ただ、クリアの方は両足だけに刃物が突き立てられていた。
「クリア・・・クリア!」
「クランベリー、痛いよぉ・・・!」
泣き出しそうになりながらクリアは痛みを訴えていた。
クランベリーは力一杯笑顔を作るのだが、
自分の方も痛みでどうにも出来ない。
「簡単に死ねると思うなよ・・・なっ、ディムエル」
「おうよ、じゃ俺はこっちの大人の姉さんに癒して貰うか」
ディムエルと呼ばれた男がクランベリーの上に乗る。
そうかと思えば自分のペニスを眼前に付きだしてきた。
「な・・・なんのつもりよ!」
「てめぇらを綺麗にしてやるんだよ。汚らしい悪魔共をな」
「そんなの・・・むぐっ!?」
思い切り口の中に入れられて、
クランベリーはむせかえりそうになる。
噛み付こうにも頬を強く押さえられていて噛み付けなかった。
その男の姿しか見えないクランベリーは、
急に局部へ与えられた刺激に声を漏らす。
「んっ・・・んぐっ・・・」
誰かの舌が彼女の股間を犯していた。
それも絡みつく様な舌でねぶり回している。
どうにかしようにも両手両足は串刺しになっていた。
(ごめんねクリア・・・あなたを助けられそうにないわ)
クリアの身を案じるクランベリー。
だが横を見てみるとクリアの方は、
自分より多くの相手をさせられている。
彼女は両手で天使のペニスを扱かされていた。
勿論、口も犯されている。
さらにクリアは女陰と肛門を交互に犯されていた。
「んくっ、あはっ・・・ふっ、うぅ・・・っぐ・・・」
快感を与えられながらも涙を溢れさせるクリア。
悔しさのせいもあったが、
快楽よりも痛みの方が実際に強かったのだ。
全てを吹き飛ばす様な力があれば良い。
しかしクランベリーにもクリアにも、
もはや力は少しも残っていなかった。
本当なら瞬殺出来る様な天使達。
そんな奴らに犯されていく屈辱。
辺りから飛び散る白濁。
そしてじきに絶頂を迎え弛緩していく身体。
クランベリーは何も出来ない自分に、
歯がゆさを感じるだけだった。
それもすぐに快感の渦に飲み込まれていく。
屈辱と、快楽の狭間で二人は陵辱され続ける。

Chapter46へ続く