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黒の陽炎

著作 早坂由紀夫

『勝てば良かろうバイブレーター』

 次の日、私は図書館で例の文献を見てみる。
 副作用ってどんなのがあるんだろう。
「えっと……性別認識に障害が起こる場合があります。
 また、性格が著しく変化する場合もあります。
 さらに自分より格上の相手に使用した際、
 相手が言う事を聞いてくれないかもしれません」
 先に読んでおけば良かった。
 その先にあるチャームの解き方の項目も見てみる。
「チャームの解き方は、アンチと唱える事。
 或いは24時間を経過すると解呪されます」
 じゃあどうして凪さんのチャームは解けたんだろう。

 …………

 一応、カシスさんに謝る為に公園跡に呼び出した。
 彼女は別段怒っている様子はない。
「カシスさん……ごめんなさい」
「別に良いの。その代わり、この間の事は秘密なの」
「あ、はい」
「凪にも秘密なの」
「え?」
「あの凪はホントに怖かったの……。
 思い出してあの性格に戻ったりしたら洒落にならないの」
「……確かに、そうですね」
 本当は凪さんと仲良くなる為のチャームだったのに、
 なぜかカシスさんとの距離が縮まったみたいだった。
「でも……ちょっとだけあの時の凪とまたえっちしたいの。
 あんなに気持ちいいのは初めてだったの」
「え……いま、なんて?」
「気にしなくて良いの」
「は、はぁ……」
「まったく、それにしても
 真白のおかげで酷い目に遭ったの」
「面目ないです。本当にごめんなさい」
「こんなコトなら本気で真白の処女を奪えば良かったの」
「それは嫌です〜〜〜っ」
「勝てば良かろう、なの」
 彼女は背中からしゅるしゅると何かを取り出す。
「うわあっ!?」
 思わず声を上げてしまった。
 だってだって、それは……バイブレーター。
 妙に可愛い形をしているけど、
 話に聞いたそれに間違いない。
 しかもうにょうにょと動いています。
 さらに電池が入っています。
 カシスさんは本気で使う気満々みたいです。
 芽生えかけた友情、取り消しです。
「この子に処女を捧げるの、真白」
「ぜっっっっっっったいに嫌です!」

第六話へ続く