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黒の陽炎

著作 早坂由紀夫

obsessively』

 それは二年生の教室内での出来事だった。
 困った様に笑う背の高い女性。
 その女性にもう一人の女性が、
 後ろから抱きつきながら胸を押しつける。
「凪をもっと女らしくしてあげるの」
「そ、それにしても場所を選ぼうよ……」
 放課後に残っていた二人の周りには誰もいない。
 だが教室で性行為をするとなると、独特の背徳感があった。
 カシスにしてみれば気にする程の事ではない。
 ただ、普通の価値観を持つ人間ならば
 戸惑ってしまうのが当たり前だった。
 なんとかカシスから逃げようとする凪。
 しかし彼女に男根を掴まれた為に動きが止まってしまった。
「こ……こんなトコで……」
「こんな所だから女言葉のままじゃなくちゃ、
 凪はもしもの時に言い訳が出来ないの」
「くっ……あ、はぁっ」
「可愛い声なの。でもココにはこんなのが付いてる」
 慣れた手つきで下着を脱がし凪のモノを弄ぶカシス。
 彼女は空いたもう一つの手で凪の胸に手を伸ばした。
 Yシャツのボタンを二つ外すと、
 そこからパットの内側へと手を入れる。
「な、そんなコトしたって気持ちいいはずない……わよ」
「性感帯に男と女で大きな差異はないの。
 だからこんな風にすると、感じるはずなの」
 凪の胸、特に乳首の辺りを親指と人差し指で押しつぶす。
 さらに凪のうなじへ舌を伸ばすと、丹念に舐め上げた。
 そんなカシスの執拗な愛撫に、
 凪は堪え忍ぶ様にじっと目を閉じる。
「あっ……ん……」
「凪、本当は女に生まれた方が良かったの。
 だってこんなに可愛い女の子は見た事がないの」
 耳のすぐ舌でそう囁くカシス。
 彼女の手はまるで凪の思考を溶かす様に、
 その性感帯を的確に突いていた。
 おかげで凪は受け身に回るしかない。
「ちょ……やっぱり、部屋に……戻ろうよ」
「ホントに? ホントはもう我慢できないんじゃないの?」
「そんな事な……ああっ……」
 カシスが凪の背中に押しつけた胸を、
 円を描く様に擦りつけていた。
 びくっと凪の身体が震える。
 むずがゆい様な快感が凪を支配していた。
「わ……私もう、カシス……あうぅ……」
 凪の限界が近い事を見て取ると、
 カシスは凪の正面に周り膝をつく。
 そして手の動きはそのままに男根へと唇を這わせた。
 彼女から見るとその光景はあまりに奇妙に見える。
 すらっとした足の先にある太腿を隠すスカートと、
 そこから覗く不釣り合いなモノ。
 教室の机に凪を座らせるとカシスはそれを口に含む。
「くふ……射精したいの?」
「う、うん……んんっ」
「凪の顔がもうちょっとエッチになるまで、
 イカせてあげないの」
「そ……そんなぁ」
「段々いい顔になってきたの。
 もっと切なくて可愛い顔をして欲しいの」
 わざと焦らす様に快感を与えるカシス。
 少しずつ凪は頭が働かなくなり始めていた。
 さらにカシスは裏筋をくすぐる様に舌で舐め上げる。
「くぅっ……そんなトコ、弄らないで……よぉ……」
「止めて欲しいの?」
「そ、そうじゃないけど……」
「イカせて欲しいならそう言ってほしいの。
 じゃないとこうやって虐めてるだけなの」
「あ……で、でも、そんなの恥ずかしい」
「ふ〜ん」
 にやにやと笑いながらカシスは愛撫を続けた。
 教室内にぴちゃぴちゃという淫らな音が響く。
 凪の理性はすでに殆ど働かなくなっていた。
「カシスの……いじわる」
「凪は女の子なの。だから、恥ずかしくなんてないの。
 さあ、早く言うの。気持ちいいんだよね?」
「気持ちいっ……ん……良いよっ」
「泣きそうな顔して、凄く可愛いの」
「カシス、その、い……イカせて。お願いだからぁっ……」
「んく……良いよ。射精させてあげる。
 全部飲み込んであげるの」
「ああぁっ、はぅんっ……くぅっ……!」
 凪は痙攣する様に体中を快感で震わせた。
 その精液を苦労しながらカシスが飲み込んでいく。
「美味しくはないけど、不味くもないの」
「はぁ……はぁ……」
「……まだ終わりじゃないの」
 もう一度カシスは唇を男根へと近づけていった。
 尖端の部分を舌先で焦らす様につつく。
「ちょ、もうちょっと待っ……んんっ」
「待つ必要は無さそうなの」
 すぐに凪のそれは硬度を取り戻していた。
 それだからか少し頬を染めながら俯く凪。
 カシスはYシャツを軽く外すと下着を下ろし、
 右足を凪をまたぐ様にして机の上に乗せる。
 そのまま彼女は凪の男根を飲み込んでいった。
「濡れてる……カシス、感じてた……の?」
「あふっ……仕方ないのっ……。
 だって凪のを見てたらもう、条件反射なのっ」
「こ、声が大きい……よっ」
「んはぁあぁっ……凪が、いけないんだよ。
 こんなに、気持ちいい事を教えたのは……凪なのっ」
 二人とも身体を打ち付ける様にして互いを求め合う。
 凪はカシスの身体を抱きしめる様にして行為に没頭した。
 そのまま凪は彼女の左足を持ち上げて机に乗せる。
「あっ、はっ……」
「んはぁっ……んっ、んっ……ひゃんっ!」
「いく……また、いっちゃうよっ……」
「うんっ、んっ……良いよ、来るのっ」
 カシスの唇に凪は軽く口づけを交わす。
 そこからスピードを上げてカシスを突き上げた。
 その度に華奢な彼女の身体が上下に揺れ、
 二人の汗は飛沫になって辺りに飛び散る。
「あはぁああああぁっ……いき、そ……なの……」
「私も……いくよ、もう……うぁっ」
「あうっ……ひぁぁああぁあっ……!」
 凪は構わずに膣内へと迸りを注ぎ込んだ。
 すがりつく様にカシスは凪の身体に抱きつく。
 そんな二人の接合点からは、
 愛液と精液の混じり合ったモノが零れていた。



「凪とえっちするとなんか得した気分になるの」
「私は恥ずかしいけど」
「でもまだ女らしさをマスターしたとは言えないの。
 次は人の居る時にこっそりとするの」
「もう二度としないわよっ! これじゃ変態じゃないの!
 それに人が居る時になんてしたら絶対バレるよ……」
「そんな事無いの。声を出さない様にすれば出来るの」
「私はたぶん出来るけど、カシスは無理でしょ」
「がんばるの」
「はぁ……とにかく、もうこんなのは嫌だからね」
「その割には、二人きりでも女言葉なの」
「そっ、それは……その……」
「実は女の子になりたいの?」
「違うっ! ただ、慣れちゃっただけだよ……」
「難儀な男なの」
「そう。俺って男なんだよなぁ……一応」
「私的には『俺』より『私』の方が凪に合ってる気がするの」
「そんなのは絶対に嫌……」


                -了-

その2へ続く