ある日偶然。
真白が暇つぶしに吸血鬼の事を調べている時だった。
その能力の一つにチャームという物を見つけてしまう。
「え〜と、吸血鬼は血を吸う相手にチャームを使い、
相手を魅了して抵抗できない様にします。
これって……使えるかも」
次の日、真白は公園跡で凪と会っていた。
さりげなくカシスも居るが気にしない。
「凪さんっ。私の目をよ〜く見てください」
「え? うん」
じっと見つめ合う凪と真白。
彼女は吸血鬼の力を使って凪にチャームをかける。
凪の目が徐々にとろんとしていく。
仕上げに真白は腕を回してキスをした。
カシスが止めようとするが間に合わない。
「な、凪に何するのっ!」
「……真白、ちゃん」
軽く微笑むと凪は真白の身体を抱いてキスをした。
「凪? 一体これ、どういう事なの真白っ」
「さあ……」
質問に答える余裕もなく、
真白はぽけーっとした表情で凪を見つめる。
引きはがそうとカシスは凪の腕を掴んだ。
だが凪は微動だにしない。
「真白ちゃん、大好き」
「きゃあぁ〜〜っ! そんなはっきりと……うわぁ〜」
「はっ……これは、チャーム?」
「む。気付くなんてカシスさん、なかなかやりますね」
「チャームは反則なのっ」
「勝てば良かろうなのです」
凪の腕に絡み付きながら真白はそんな事を言いだす。
(ああ〜もうサイコーッ)
真白はかつて無い幸福に満たされていた。
「でもなんか恥ずかしいよねぇ、真白ちゃん」
「え……なんで女言葉なんですか?」
「なんでって……私が女言葉使うと、まずい?」
「は、はい?」
はたと真白は記述の詳細を思い出す。
確かチャームには軽い副作用の様な物がある、と。
「もしかして凪さん、自分が女だと思ってます?」
「何言ってるの? 私は女だよ」
「あ、あうぅ……」
幸福から一転、がっかりと肩を落とす真白。
どうやら真白を恋人だと思った所までは良いが、
凪は自分が女だと思いこんでしまった様だった。
(これじゃ認識はレズじゃない……駄目じゃん、私っ)
「真白、不様なの」
カシスは状況を把握すると真白を嘲笑する。
「くっ……べ、別に恋人には変わりないですよね〜」
「うん。私と真白ちゃんは恋人だよ」
屈託の無い笑顔で凪は真白に微笑みかけた。
その恋人に向けられる微笑みに、
真白は口元をゆるめずには居られない。
(や、やっぱりこれでもいいかも……)
しばらくしても真白のチャームが解ける様子はない。
仕方なくカシスは静観する事にした。
チャームは特殊な能力だ。
簡単ではあるが、術者か被呪者にしか解除できない。
第三者であるカシスがどうしようと、
凪を元に戻す事は出来ないのだ。
だがいちゃついている二人を見ている事が出来ず、
彼女は凪を置いて何処かへと去っていく。
公園跡のブランコでそれを見ていた真白は、
少しだけ罪悪感を感じてしまった。
(私、よく考えると悪い事しちゃったのかも……)
しかし真白自身にも解除方法は解らない。
それに凪といるとそんな事は吹き飛んでしまっていた。
「なぁ〜ぎさんっ。またキスしても良いですか?」
「うん」
真白は目を閉じると両手をちょこんと膝の上にのせる。
自分で提案してもあくまで受け身なのだ。
すぐに真白の唇に柔らかい物が当たる。
「ん……んんぅっ!?」
急に唇の中に何かが入ってきたので、
真白は驚いて目を開けてしまった。
ぬめりとしたものが舌に絡みつく。
(な、凪さんキス上手すぎるよぉ……)
身体から力が抜けていく様な感じだった。
だが彼女は気付いていない。
普段では考えられないほど凪のキスが上手いという事に。
「あふっ……はぁ、はぁ……」
「ん……私、真白ちゃんと最後までしたいな」
「え、えええっ!?」
(それは、それわぁ……そういう事ですかー!?)
凪の顔が怪しく微笑む。
ブランコが真白の動揺を表す様に揺れていた。
「ここでしよっか」
「は……はいっ!?」
すくっと凪は立ちあがって真白の手を取る。
それに習い真白も立ちあがると、
不意をついて凪は真白の胸に手を伸ばした。
「きゃっ、ちょっと凪さんっ」
「やっぱり胸、大きいね。
誰かに触らせた事ってある?」
「あ、ありませんよぉ」
形を確かめる様に凪の手が真白の胸を揉みしだく。
止めようとするとその手は胸からすぐに離れた。
その代わりにそれは下へと伸びていく。
「えっ……?」
凪の手は真白の太腿を撫でる様に触り始めた。
「あのぉ……せめて何処か、違う所に行きませんか?」
恥ずかしさに俯きながら真白はそう言う。
だが容赦なくその手はスカートの中へと伸びた。
「ひゃあっ!? あ、あの凪さん?」
「私、真白ちゃんの恥ずかしがる姿が見てみたいな」
「駄目ですっ!」
強い口調で真白は凪を制する。
「良いですか凪さん。
こういう時は、私がリードするんですっ」
「え?」
「だから今日、夜這いしに行っちゃいますから!」
「よ……夜這い?」
唖然とする凪を余所に、真白は走り去っていく。
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