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黒の陽炎

著作 早坂由紀夫

『カシスにお仕置き』

「な……凪? 何を言ってるの?」
 私の目の前で凪さんは微笑んだままで、
 カシスさんの衣服を乱暴に脱がしていく。
 なんか凪さんじゃないみたい……。
 無理矢理にカシスさんの秘部を露わにすると、
 凪さんは両足を手で持ち上げて挿入してしまった。
「あっ……いた、痛いの凪っ」
「当たり前でしょ。お仕置きなんだから」
 ま、まさかこれも副作用の一種なのかも。
 呆然とする私の前で、凪さんは激しくカシスさんを攻めた。
 足を動かして彼女の向きを強引に変える。
 ベッドがギシギシと揺れるほどに出し入れしてる。
「いや……痛いのっ」
「ふぅん。それでも濡れてきてるけど?」
「そ、それは……んん〜っ!」
 何かの刺激を与えられたのかカシスさんの表情が変わった。
 さっきの痛がりようとは正反対に甘い声を上げる。
「どうしてカシスはそんなにえっちなの?
 普通こんな酷いコトされて濡れたりしないわよ」
 凪さんはくすくす笑いながらカシスさんにそう囁いた。
 身体と身体のぶつかる音が部屋に響く。
 いつしか彼女の表情に辛そうなものは無くなっていた。
「はふっ……な、凪っ……なぎぃっ……!」
「……どうしたの? これじゃお仕置きには足りない?」
「ち、ちが……んくっ」
 彼女の身体が一際大きく揺れる。
「奥っ……当たって……あうっ!」
 っていうか……こんな現場、見てられないよ……。
 私は思わず目をふさいでしまう。
 どうして二人ともこんなに慣れてるのかなぁ。
 もしかして私って遅れてるの?
「あんっ、あっあっ……激しすぎ、るっ……」
「カシス感じてる? 駄目だよ、お仕置きなんだからっ」
「だっ……あ、駄目っ……いっちゃうのっ、
 くるっ、きちゃうよぉっ……ああぁあああっ!」
 目を閉じてる方が刺激的な気もする。
 薄目を開けて見てみると、
 カシスさんは息するのも辛そうに喘いでいた。
 それで凄く気持ちよさそうに揺れている。
 ただ、彼女は泣きそうにも見えた。
「動かしちゃ、やなのっ……なんか、変な感じなのっ……」
「そんな事を私が聞くと思う?」
「や、止め……ひうっ!」
 言葉では止める様に言ってるけど抵抗する素振りはない。
 彼女は快感に震えながら凪さんに身体を任せていた。
 ただ抵抗のつもりなのかカシスさんは指をくわえて、
 声を出さない様に快感を堪えている。
 けど指に歯形が付いて血が滲むほど強く噛んでいた。
 気持ちいいのを我慢する事が出来ないみたい。
「うっ……くふっ……んああっ……駄目、駄目なのっ!
 また、またいっちゃうのぉっ!」
「まだまだ許さないよ。私の真白ちゃんを襲うなんて」
 気付けばカシスさんは口元から涎を零していた。
 指をくわえるのも忘れて口が開きっぱなしになっている。
 なんか……凄い光景だよぉ……。
 大体にして襲ったのはカシスさんじゃなくて、
 私なんですけど……それを言ったらどうなるんだろう。
 い……言えない。
「な、凪さん……もう良いですから」
「ダメダメ、真白ちゃんは優しすぎるなぁ〜」
 そう言って私に笑う凪さんの笑顔は少し怖い。
 凪さんの攻めは休まるどころかさらに激しくなっていた。
 カシスさんを抱きかかえて抱っこする様な体勢になる。
「ふわあぁあぁっ……こ、壊れちゃう、の」
 これって、いわゆる座位?
 出し入れする二人のが、見えちゃってる……。
 し、心臓がバクバク言ってます。
 私みたいなお子様にはショックが強すぎるみたい。
 がくがくと震えながらも、
 カシスさんは自分から動いていた。
「んっ……ほら真白ちゃんが見てるよ」
「あはぁ……み、見ちゃ駄目なの……」
 ぼうっとした顔で揺れているカシスさん。
 ろれつもあまり回っていなかった。
 容赦なく凪さんは彼女の乳首に噛み付いて、
 おまけに左手の指を……うわぁ、あんな所に……。
「なっ……そんなトコ、汚いの……ひゃんっ」
「あはっ、カシスは変態だからね。
 こんなコトされると気持ちいいんでしょ?」
 彼女の耳元でそう凪さんが囁く。
「変態なんかじゃ、ないっ……の」
「ふぅん。だったらお尻の穴を掻き回されても平気よね」
 一言で言えば、圧倒されていた。
 あまりにも異常な光景を前にして。
 凪さんは彼女を後ろから抱える様にして抱く。
 うわ、中指が全部入っちゃった……。
「くぅっ……駄目、そんなにしちゃ駄目なのっ……!」
「でもカシスのここは私の指を放そうとしないよ?
 ほら! もっと激しくしてあげる!」
 さらに凪さんの動きが早くなる。
 それにつれてカシスさんの身体を強く抱きしめていた。
 まるで絞め落とすくらいに強く。
「あん……締め付けてくるよ。んっ」
 恍惚とした表情で凪さんは時折喘ぎ声を上げる。
 えっと、凪さんは女の人……じゃないよね。
 もう何がなんだか解らなくなりそうだった。
「かはっ……し、死んじゃうっ……なんなの、これっ……!
 気持ちよすぎて、怖いよっ……んああぁっ!」
「ふふっ、死んじゃうのも良いかもよ?」
 凪さんは微笑みながら恐ろしい事を言ってる。
 口振りから察するに、この状況でも
 自分が男の人だとは思ってないみたい。
 もしかして考えが麻痺してるのかな。
 だって凪さんの姿はどう見ても男の人だよ。
 二人の接合部が視界に入って私はそっぽを見てしまう。
 下を見ない様にしていると、
 自然とカシスさんの顔に目がいく。
 女の子って、気持ちいいとこんな顔するんだぁ……。
 カシスさんの瞳は凪さんを見たまま固まっている。
 彼女の口は閉じる事を忘れ、淫靡に囀っていた。
「私もいくよ、カシス……ああんっ……受け止めてっ」
「んはぁっ……ああぁぁあっ」
 叫び声に近い喘ぎ声を上げてカシスさんがまた果てる。
 凪さんも彼女の中に全てを注ぎ込んだみたいだった。
 カシスさんは糸の切れた人形の様にベッドへと倒れる。
 彼女は身じろぎも出来ない程に疲弊していた。
 胸が酸素を補おうとする様に激しく上下している。
「3、4回はいっちゃったみたいね。
 まったく、お仕置きで良い思いするなんてカシスったら」
「な……凪さん、ちょっとやりすぎじゃ……?」
「良いの。私の真白ちゃんに近づく奴は、許さないのよ」
 にこやかに、でも力強く凪さんはそう私に言う。
 少し艶やかなその仕草に私は釘付けになっていた。
 そして凪さんは怪しげに笑うと私に言う。
「おいで」
 いつもとは違って危なげな凪さんもまた素敵……。
 自然と私は彼の胸に抱きしめられていた。
「真白ちゃんがリードしてくれるんだったよね」
「あの、でも……」
 今の凪さんじゃそんなこと出来そうにない。
 それなのに凪さんは凄い殺し文句を呟いた。
「良いよ。私の事、可愛がってね」

第四話へ続く